身内の方が亡くなって遺品整理をする段階で、持ち物の中に着物があると、その処分に困ることがあります。高齢の女性の中には若いときに着物を着ていた方も多く、また、茶道、華道、日舞など日本の伝統文化に趣味を持っていた方などは、持っている着物の数も相当なものになります。

親族が和装のたしなみのある一族である場合は、親族内での形見分けで問題なく整理されていきますが、個人の趣味が着物で身内を含めて親族にも着物を着る人がいない場合は、着物の価値も分かりませんから処分に困ることになります。

いっそ、保存状態が悪くて全て虫食いで穴だらけだったら、ゴミとして捨てられもしますが、桐の簞笥などに大事に保管されている場合、意外に問題になる遺品としての着物を考えてみたいと思います。

遺品整理で着物の取り扱いに困る理由

着物は、素材や希少性で価格が大きく異なりますが、いずれにしても洋服より高価です。高級素材の逸品だったり、高名な作家の名品だったりする場合は、かなりの高額になります。遺品整理をして見つかった着物は、知識のない人にとってはその価値の判断がつかずに処分に困ってしまいます。

身内で形見分けをする際に引き取り手がいれば一番いいのですが、今の時代、自分で着ることもなかなか難しいですし、着物を着る機会も少なくなっています。1枚2枚くらいなら引き取って、いつか何かの改まった席の折に人に着付けを頼んで着てみてもいいくらいは思うでしょうが、まとまった枚数を引き取るのは難しいでしょう。

着物好きな友人知人に声をかけてみるのもいいかもしれませんが、他人に引き取ってもらうとなると気も使います。

着物の再利用の方法

遺品の着物にどうしても引き取り手が現れない場合、洋服にリメイクしてもらうことも考えられます。現代にも通用する柄だったり、非常に高価な生地だったりした場合、着物リメイクの専門業者に頼めば個性的な一着に生まれ変わります。洋服にない華やかな雰囲気は、特別なお出かけや宴席などで活躍します。

また、保存状態が悪くて傷んでいる場合は、使えるところを切り取って、クッションカバーにするとか、パッチワークの端切れとして使うなど、手芸の材料にしてみましょう。生地が良ければ、思いのほか味わいのあるいいものに仕上がるかもしれません。

売却という手段

ある程度の値段の着物がそろっている場合、着物引き取り業者に連絡してみた方がいいでしょう。宅配便で送って査定してもらって、そのまま買い取りしてもらえるところもあります。金額はともかく、引き取ってもらいたいのであれば手軽で手早く遺品整理が進みます。

買い取り業者に自宅まで査定しに来てもらうこともできます。担当者と直接買い取り金額の交渉ができるので、着物の総額がまとまった金額になると予想される場合には納得のいく方法です。

特に高級な着物ではなく、数もそれほどではない場合は、リサイクル店に持っていって買い取ってもらいましょう。これはもう、高級品の売却というものではありません。あくまで日用品の一つとして査定されるので、金額には期待せずに「処分できる」と思って利用するといいでしょう。

今は、インターネットのオークションサイトに出品する方法もあります。会員登録して、商品となるものの写真をネット上にアップすれば買い取り先が見つかります。不特定多数の人が相手なので、買いたいと思う人に出会える確率は多くなりますし、必要な人に買い取ってもらえます。

遺品整理と同時に一気に処分してしまいたいという人は、遺品整理業者に依頼すると便利です。まとまった数の着物がある場合は、査定をして買い取りを行うところもあります。リサイクル業者に回せるものは現金化して戻したり、その分を遺品整理料金から差し引いたりすることもあります。

着物を処分するときはお焚き上げを

ほぼ既製品の洋服と違って、着物の多くは採寸して体に合うように仕立てられた一点ものです。生地を選び、採寸してもらい、一針一針縫い上げてもらうものなので、それだけ持ち主の想いがこもっているといえるでしょう。故人を知る人にとっては、簡単に捨てられるものではありません。

とはいえ、引き取り手が現われず、売ることもできなかった場合には、そのままにしておくこともできないので廃棄するほかありません。ましてや退居期日が迫っていたりすればなおさらです。
そんなときには、故人の想いを浄化してから廃棄するよう、お焚き上げも請け負う遺品整理業者に依頼するといいでしょう。

遺品整理業者と提携した神社やお寺が、故人や遺族の方々の想いが残った遺品にお祓いをしたり、読経をしたりして清め “想い”抜きます。清めの後などは、処分する気持ちも楽になるのではないでしょうか。